2015年10月18日日曜日

感じない、話さない、信じないという法律




アルコール依存症という病気は当事者にとって孤独な病気ですが、それ以上に子どもには孤独、孤立の状態を生き延びなければならない寂しい世界だけでなく、沈黙のうちに全エネルギーを使う戦いです。

子どもが成長する時期にアルコール依存症という病気に全エネルギーを使うことは、成長に時間が使えずに生き延びなければならないのです。とても過酷な世界であることがお分かりいただけると思います。

生き延びるためにアルコール依存症者の子どもたちがすることは、
  • 感じない
  • 話さない
  • 信じない
ことです。これらは目の前で起こる現象を通して、法律のように教え込まれます。

目の前で、親がひっくり返っていても、「なにも変わったことは起こっていない」と言われると、自分の感じ方とのギャップに苦しみますが、まず、その言葉を受け入れて、自分の不安な感情を切り離します。さらに「誰かに言ってはダメよ」と注意されると「話さない」と決めます。その上で目の前で起こった現象を「信じない」と決めます。
  • 感じない
  • 話さない
  • 信じない
この三点セットをなにがなんだかわからない内に、自分の法律にしてしまったら自然な自分は失われます。それと引き換えに否応なしにコントロールする技術を学ばざるを得なくなり、なにより自分をコントロールするようになります。自分へのコントロールは「抑圧」という技術になります。
したがって、親をはじめ周囲からは「良い子」になります。この良い子というラベルの実態は自分の自然で瑞々しい知覚を自分から切り離すことでしかないのですが、そうしていると褒められるので、ますます「抑圧」という技術を磨いて成人していくことになります。

つまりアルコール依存症者の子どもが、無事に成人になったということは、孤独、孤立の状態をひとりで、誰にも助けを求めず、生き延びたということであり、今後も助けを求めずに生きて行くということなのです。

もう一方の親はどうしていたのだという疑問が浮かぶでしょうが、アルコール依存症者の親と決別していないとしたら、共謀者にならざるを得なく、

  • 感じない
  • 話さない
  • 信じない

の三点セットは、アルコール依存症者でない親の方から学ぶことになります。それゆえアルコール依存症という病気は子どもにとって孤独な病気になってしまうのです。




この孤独に手を差し伸べ救出することは、容易ではありませんが、深い愛情と献身と忍耐、そして時間を投入することで可能にもしますが、覚悟が必要です。

中途半端に関わることは、かえって傷つけてしまうことも少なくないからです。

でも、アルコール依存症者の子どもたち、すなわちアダルト・チルドレンと呼ばれる人たちには、とっても魅力的な人が多いのも事実です。その長所にスポットライトを当てて大切にしてあげてほしいものです。


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